宇都宮で最初に餃子をメニューに載せたのは「宮茶房」という店といわれています。戦後まもない昭和26年頃から、JR宇都宮駅近くで数年間営業していたそうです。昭和20年代の終わり頃には「宇都宮みんみん」の前身である「ハウザー」が営業を始め、宇都宮市役所そばの「大銀杏」の下で屋台「蘭鈴」が営業を始めたのもこの頃のようです。昭和30年代には伝説の店「忠次」、少し遅れて「正嗣」、「輝楽」、「香蘭」などの店が次々と餃子を提供し始めます。
この最初の餃子ブームの理由にはいくつかの説があります。戦後、北京や満州など中国東北部からの引揚者が現地で覚えた餃子で商売を始めると、かつて宇都宮にあった第十四師団の兵士たちがこぞってこれを食べ、一般の人々にも広まったという説もそのひとつですが、いずれにせよ餃子が一般庶民の支持を得たことで餃子店が繁盛し、餃子を提供する店が増えました。また宇都宮は小麦や白菜、豚肉、ニラの産地で手に入りやすく、餃子を商品にしやすかったことも背景にあると思われます。一方で宇都宮の人が餃子を好むのは、冬は寒く、夏は蒸し暑い内陸性の気候のせいともいわれています。
時代を経ても、宇都宮では餃子を食べる習慣が他の市町と比べて抜きんでていることは、餃子専門店の数だけを見ても明らかでした。しかし現在のように、宇都宮が「餃子のまち」として全国から認知されるようになったのは、平成に入ってからのことです。
きっかけは宇都宮市の職員が役所内の研修活動のなかで、塚田哲夫さんをはじめとする若手メンバーが「餃子で宇都宮を有名にしよう」をテーマに選んだことです。これは総務省(当時は総務庁)の家計調査で、宇都宮市が昭和62年の調査開始以来、毎年「餃子消費量日本一」だったことからスタートしています。
やがて、宇都宮市役所の当時の観光課係長、沼尾博行さん、「宇都宮みんみん」の伊藤信夫社長などが中心となって「宇都宮餃子会」を設立します。その活動をテレビ東京で放映されていた山田邦子さん司会のバラエティ番組「おまかせ! 山田商会」が7回にわたって取り上げたことから「宇都宮餃子会」は全国的に知れ渡り大ブレーク、空前の餃子ブームが訪れました。みなさんおなじみの「餃子像」もこの番組から生まれたものです。
市外から餃子を目的に訪れるお客様は年々増加し、それにつれて、餃子店が点在し回りにくいといった声が聞こえてくるようになります。その問題を解決すべく、平成10年には現在の「表参道スクエア」の場所にあった建物に宇都宮商工会議所が「来らっせ」をオープン。お客様がひとつのお店でさまざまな店の餃子を味わえるようになりました。さらに、餃子会加盟店が協力した共同事業への取り組みも始まります。
この頃、餃子会や宇都宮観光コンベンション協会などに餃子についての苦情が相次ぎ、調べてみると他県業者による粗悪な「ニセ宇都宮餃子」が横行していることが判明します。その対策のため、宇都宮餃子会は「宇都宮餃子」のブランド保護に取り組むべく会の組織を協同組合に改め、商標登録に挑みました。紆余曲折を経て、平成13年に「宇都宮餃子会」が、平成14年に「宇都宮餃子」が登録商標となります。
毎年11月に行われる「宇都宮餃子祭り」には、今や14万人以上の観光客が訪れるなど、「宇都宮餃子」は地域の経済活性に大きな役割を果たしています。平成18年には「来らっせ」を従来の4倍の規模にリニューアルしました。
順調な歩みを重ねていた宇都宮餃子ですが、平成23年3月の東日本大震災以降は困難が訪れます。栃木県を代表する観光地である日光や那須からの観光客が激減した余波が、宇都宮餃子にも大きな影を落としたのです。原発事故の風評被害などもあり、15年間守ってきた「餃子消費量日本一」の座からも陥落。しかし「日本一の餃子のまち」を守るべく、平成24年には宇都宮市民有志による「宇都宮餃子日本一奪還推進委員会」が発足し、官民挙げてPR活動に取り組んだ結果、ついに平成25年に再び日本一の座を取り戻すことができました。これを皮切りに県外でのイベントなどPR活動にも積極的に取り組み、平成26年の秋には横浜赤レンガ倉庫にて「宇都宮餃子祭り in YOKOHAMA」を開催。2回目の開催となる平成27年春には3日間で16万人の来場者が訪れました。さらに、旅行会社とのタイアップによる観光ツアーも企画され、これらの成果も相まって県外から宇都宮を訪れる観光客は増加しています。もちろん、市民が日常的に餃子に親しみ、誇りに思っていることが「餃子のまち宇都宮」を支えていることは言うまでもありません。
宇都宮餃子のタレといえば一般的には酢が多め。でも、タ
レの使い方でもっと楽しめますよ。餃子LOVEな鈴木事務局
長のお好みは、ラー油の砂を存分に楽しむ食べ方なんです!
- ❶ ラー油の油を切って「砂」をすくい取る
- ❷ 砂を取り皿に置く
- ❸ 砂を適量つけて食べる
- ❹ 砂のピリリとした辛さでお楽しみください
- ❶ 餃子の入った器にしょうゆを適量入れる
- ❷ 好みで酢を適量入れる
- ❸ ラー油の「砂」を入れて溶かす
- ❹ 餃子を中で割れば肉汁がスープに溶け出し、最後の一滴まで楽しめる
多くの店でメニューは焼餃子と水餃子、揚餃子が基本。じゃあ、どんな頼み方すればいいの? そんな宇都宮餃子初心者のあなたに、基本の注文のしかたを伝授しましょう。おまけに、ちょっとツウな食べ方も大公開!
焼餃子は「ヤキ」、水餃子は「スイ」、揚餃子は「アゲ」という呼び方が一般的。焼餃子を1人前注文する時には「シングル」、2人前なら「ダブル」、3人前なら「トリプル」と頼んでみよう。さらに焼餃子2人前、水餃子1人前を注文する時には「ダブル・スイ」と言ってみて。
お酢多め、もしくはお酢のみで食べる方が多いのも宇都宮では一般的ですが、宇都宮ではオリジナルのタレを用意している店も多い。特にラー油には唐辛子などの香辛料の粉(砂という)がブレンドされており、好みでタレを使い分ければ、餃子の味わいが倍増することまちがいない。